歯科健診の義務化の概要

政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022（骨太の方針）」において、「国民皆歯科健診」制度の導入について言及されています。この制度は、日本の国民に毎年歯科健診を義務付ける内容です。

現在、歯科健診の義務は、1歳半、3歳、小学生から高校生、特定の職業に従事する人々のみが対象となっています。この歯科健診の義務を、国民全体に広げようとする試みが今回の国民皆歯科健診です。

歯科健診義務化の背景

歯科健診義務化の背景には、日本人の歯科健診の受診率が低いという問題が存在します。厚生労働省の調査によれば、過去1年の間に歯の定期チェックを受けた人は全体の約53％で、国民の半数は定期的な歯科健診を受けていない状況です。

一方、アメリカやヨーロッパといった地域においては、国民の歯科健診の受診率が非常に高い傾向があり、これらの地域は歯科医療の先進国として知られています。歯科健診を受ける人が多いほど、国民の歯の健康状態が向上するのは自然なことです。

日本でも歯科健診の受診率を向上させ、欧米諸国との差を縮める試みが、今回の歯科健診義務化の背景に存在しているといえるでしょう。

歯科健診義務化の目的

歯科健診義務化の主な目的として、以下の2点が挙げられます。

国民の健康寿命を延ばすこと

歯と口の健康は身体の健康に密接に関わっています。そのため、定期的な歯科健診で歯の健康を維持することは、健康寿命を延ばすための重要な要因の一つです。

歯の本数が少ない、咀嚼に困難があるなど、歯の健康が損なわれると食物を摂ることが難しくなり、適切な栄養を摂取できなくなる可能性があります。

また、歯の疾患である歯周病は、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、骨粗鬆症、関節リウマチなどの全身の疾患を引き起こすリスクを高める可能性がありますので、注意が必要です。歯肉炎などの口内疾患も、慢性的になると心臓病や糖尿病など他の疾患のリスクが増加することが知られています。

このような背景から、歯科健診によって口内の問題を早期に発見し、適切に治療すれば、国民の健康寿命を延ばすことにつながると期待されています。歯科医院においても、歯科健診を推進するために、ネット予約から気軽に利用できる環境を整えるようになりました。

医療費削減

歯科健診義務化のもう一つの目的は、国民全体の歯と身体の健康を促進すると同時に、国の医療費を削減することです。

歯の状態が悪い人が増えれば、それに伴い治療を必要とする人数も増加し、国の医療費が増加します。逆に、国民皆が歯科健診を受け、国民全体の歯の健康を促進すれば、治療を必要とする人数が減少し、国の医療費の削減が期待できるのです。

健康な歯は、歯の疾患だけでなく、それに関連する全身の疾患のリスクを低減させるため、高額な医療費が発生する可能性が低くなります。

歯科健診の義務化の時期と費用

政府によれば、歯科健診の義務化は2025年までに実施するという方針が発表されています。ただし、あくまで方針にすぎず、現時点では具体的な開始時期が確定しているわけではありません。

また、歯科健診の義務化に伴う費用やネット予約の可否などについても、現時点では明確な規定はありません。歯科健診義務化の導入はまだ検討段階にあり、今後さらに詳細な内容が検討されると予想されます。